命山とは

カテゴリ: 津波

読み: いのちやま

 命山(いのちやま)とは、台風による高潮や津波、洪水で地域が浸水したときに、住民が緊急避難するためにつくられた人工高台を言う。

 江戸時代の1680年(延宝8年)、遠江国横須賀(現・静岡県掛川市、袋井市一帯)を襲った台風による高潮被害を教訓として村人が「塚」を造営、「中新田命山」(高さ5m)や「大野命山」(同3.5m)と名づけた。その後、津波や高潮、洪水時にここに避難して難を逃れたという(その痕跡はいまも残る)。
 この台風は、江戸時代最大級の台風と見られ、江戸にも大被害をもたらし、「1680年延宝東海・江戸大水害」として記録されている。

 2013年12月、津波から市民を守ろうと静岡県袋井市湊地区で新たに造営されていた海抜10mの現代版命山(人工高台)・「湊命山(みなといのちやま)」が完成、同地区住民約600人が“登り初め”を行った。
 遠州灘から約1.3km離れた袋井市湊地区は海抜2〜3mで、津波から避難できる高台や高層ビルがなかった。造営された命山は、敷地約6400平方m、頂上部面積約1300平方mで、頂上部につくられた広場は約1300人の収容が可能。

 命山造営は、東日本大震災での津波の脅威に危機感を持った地元自治会が市に要望して実現したもの。国による南海トラフ巨大地震の被害想定では、静岡県では9万5千人という膨大な津波犠牲者が想定されていて、袋井市については津波の高さは最大10m、最短7分で3mの津波が到達するとされている。

 袋井市には静岡県内最大級の「津波避難タワー」(270人収容)があるほか、市は民間企業との協定で住民避難場所の確保を進めている。
 命山と津波避難タワーのメリット・デメリットについては、命山は半永久的な施設で平時に公園として利用でき、地元住民のボランティアによる管理が期待できることがある。デメリットは、広い敷地を要し、土地取得・建設費など費用対効果が課題だ。

 避難タワーは敷地面積が少なくて済むので必要な場所に設置しやすいが、収容人数は少なく、耐用年数は約50年。また平時の利用は想定されておらず、防災訓練などでの利用に限られ、管理にも課題が残る。袋井市は沿岸部にさらに数カ所の“平成の命山”を設置するため用地交渉に入っているという。

 東日本大震災後、沿岸部の自治体にとって津波来襲の緊急時にどう住民のいのちを守るかが大きな課題となった。環境・条件、そして災害史を教訓とした避難の手法・場所等について情報共有を図り、最大の効果をもたらす対策を迅速に進めてほしい。

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