硫化水素(H2S)とは

カテゴリ: 環境

読み: りゅうかすいそ

 硫化水素(H2S)とは、硫黄と水素の無機化合物で、硫化水素ガスは無色の気体、腐った卵に似た特徴的な強い刺激臭を持つ。可燃性ガスであり引火性があり、燃焼した場合には硫黄酸化物(SOx)となる。空気より重く(比重1.1905)、水に溶け弱い酸性を示し、目、皮膚、粘膜を刺激する有毒な気体である。

 濃度が数十ppmに及ぶと人間では健康被害が起きる。100ppm以上になると嗅覚が麻痺し、死に至る場合もある。硫化水素による事故や災害は各地で発生しており、十分な注意を要する。
 (注:「ppm」とは英語で百万分の1を意味する「parts per million)の頭文字からつくられた単位。%(百分率)と同様、百万分の1を単位とする比率(百万分率)の概念で、大気汚染物質の濃度の単位として用いられる)
 硫化水素は単純な組成だが毒性が強く、火山ガスや温泉でのガス中毒事故、また、廃棄物処理や下水道事業などの現場での事故や災害が起きている。

 硫化水素は、自然由来としては、火山ガスや温泉などに含まれる。噴火口や硫黄泉などでの匂いが「硫黄の匂い」と形容されるが、硫黄は無臭であり、これは硫化水素の臭いを指している。ちなみにこの硫化水素の匂いは、悪臭防止法に基づく特定悪臭物質のひとつとなっている。
 火山の地表の噴気孔からは硫化水素、二酸化硫黄、一酸化炭素などが直接噴出していることがあり、非常に危険な状況となり得る。火山を擁する土地の先人は、有毒ガスの出やすい地域に「殺生ヶ原」とか「地獄谷」などの名前を付け、子孫や旅行者に警戒を促しているケースが多い。
 火山ガスは空気よりも重いため、火山地帯や温泉の吹き出し口などの窪地にたまりやすく、登山者やスキーヤー、観光客の火山ガスによる死亡事故や温泉宿泊客のガス中毒が起こっている。1970年以降では、草津白根山、立山地獄谷、阿蘇山中岳、八甲田山などで、また栃木県那須温泉、秋田県玉川温泉、鹿児島県霧島新湯温泉、秋田県湯沢温泉でそれぞれ硫化水素ガスによる死亡事故が発生した。

 人為的な発生源としては、石油化学工業、下水処理場、ごみ処理場、飲食店などの厨房排水分離槽や溜め枡(ます)内などがあり、硫黄が細菌によって還元されると硫化水素が発生し、死亡事故を起こすことがある。
 1999年10月の福岡県筑紫野市の廃棄物最終処分場でのサンプリング作業員3名の死亡事故を受けて国土交通省は2000年9月、硫化水素などの有害物質による事故を防ぐための「有害物質等流入事故対応マニュアル」をまとめている。

 いっぽう、近年、硫化水素による自殺が多発、これを救助しようとした人間が巻き込まれたり、階下の住民が巻き添えとなる事例も報告されており、社会問題化している。

 硫化水素ガスの急性中毒者の不救出は、化学防護服の着装等がないと深刻な二次被害をもたらす危険がある。また、発生室内の不用意な換気も周囲への二次被害の危険がある。引火性もあるため救出時には火気への注意も必要。
 応急治療は、まず外気に当てて衣服等に含まれる硫化水素を飛ばし、患者には高濃度酸素を吸入させる。

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