稲むらの火とは

カテゴリ: 災害教訓

読み: いなむらのひ

 稲むらの火とは、1854(安政元)年安政南海地震(M8.4)の津波に襲われた和歌山県広川町(当時は紀州藩広村)に伝わる逸話で、庄屋・浜口梧陵(ごりょう)が、暗闇のなかで逃げ遅れていた村人の避難を助けるために、収穫したばかりの稲を積み上げた稲むらに火を放って高台の神社境内に導いたという実話に基づく。
 人命の大切さと献身的な救命活動を今日に伝えており、後日の堤防建設を含む村の復興活動とともに、不朽の防災教材となっている。

 この逸話を「ア・リビング・ゴッド(生ける神)」として物語にまとめたのはラフカディオ・ハーン(小泉八雲)で、この作品に感動した地元の教師・中井常蔵が教科書用に書き直し、それが1937(昭和12)年から小学国語読本に採用され、戦後教科書改訂まで多くの子どもたちに読まれた。
 1946(昭和21)年昭和南海地震(M8.0)で再び広村が津波に襲われたが、公式の被害調査報告書によると、避難行動の成功事例について、稲むらの火による津波避難教育の効果が指摘されている。

 稲むらの火は2011年4月から、64年ぶりに小学5年の国語教科書(光村図書出版)に復活し、全国公立小の6割で使われている。第一線の防災研究者・河田惠昭(よしあき)関西大学教授が「百年後のふるさとを守る」と題して浜口梧陵の伝記のかたちで執筆。物語の概要を紹介し、その後浜口が次の津波に備えるために私財を投じて堤防をつくった史実を取り上げている。
 この教科書化は東日本大震災の発生前から決まっていたが、大震災に間に合わなかったことを悔やむ人も多い。

 ちなみに安政南海地震は、1854(安政元)年11月4日に発生した安政東海地震(M8.4)の翌日5日に発生し、静岡県伊豆から四国までの広範な地帯に死者数千名、倒壊家屋3万軒以上という被害をもたらした南海トラフを震源とする連動地震で、約100年間隔で発生する性質があるとされる。

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