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防災歳時記6月11日モータースポーツ史上最悪の事故

耐久レースの頂点「ル・マン24時間レース」(撮影: Dave Hamster)

 今から58年前、1955年の今日6月11日。モータースポーツ史上最悪の事故が起きた。

 

 耐久レースの頂点、ル・マン24時間レース。1955年のシーズンはジャガー、フェラーリ、メルセデス・ベンツの3大ワークスが対決していた。

 

 レース開始から2時間半後の午後6時28分。ピットインしようとしたジャガーの急ブレーキに後続のオースチン・ヒーレーがスライド。それをよけようとしたさらに後続のメルセデス・ベンツが宙に舞った。

 

 メルセデス・ベンツの名車300SLRはマグネシウム合金のボディを爆発炎上させながら、皮肉にもメルセデスのレーシングカラーである「シルバーアロー(銀の矢)」となって観客席に突っ込んだ。

 

 この事故でドライバーのピエール・ルヴェーと観客83人が亡くなった。

 

 そしてこの事故を最後にメルセデス・ベンツはル・マンから撤退。シルバーアローがル・マンに復活したのはそれから30年後だった。

 当時、自動車産業は発展し続ける「新時代の技術産業」。モータースポーツはその最先端の技術がしのぎを削る実験の場で、そこで得られたデータが市販車の技術にフィードバックされた。

 

 しかし今やモータリゼーションは変革期を迎えている。自動車産業の成長率は頭打ちとなり、資源枯渇からガソリンエンジンは電気自動車(EV)に変わりつつある。

 

 「エンジンが電気モーターに変わる」

 

 このことは、単に「自動車」という乗り物の動力源が変わるだけの問題にとどまらない。

 

 世界の構造の大きな部分に影響を与える可能性がある。

 

 もしアメリカの自動車がすべてEVになるとガソリン消費量は激減し、アメリカは原油輸入国から輸出国に転じる。それは中東でのアメリカの利権の多くが不必要になることを意味している。

 

 そうなれば将来的に同地域へのアメリカの関与は減り、結果的にアメリカ V.S. イスラム原理主義といった紛争の構図を「時代遅れなもの」にするかもしれない。

 

 一方で、強力なモーターを作るためにはレアメタル(レアアース)が必要不可欠で、現在のところその主な産出国が中国なのはご存知のとおりだ。日本も、周辺海域にレアアース資源を求めているが、21世紀の「産業のコメ」たるレアアースの産出国 中国の世界的影響力が増すことは否定できないだろう。

 

 国内の産業構造も変化するかもしれない。

 

 電気モーターはガソリンエンジンと違って摺動部(部品が動いて擦れ合う部分)が少ないので、EVはガソリン車とはケタ違いに長持ちするとも言われている。将来的には1台のクルマを「ボディだけ載せ替えて一生使う」なんてことが常識になるかもしれない。

 

 そうなれば「ボディ載せ替え工場」という商売もアリだ。

 

 そして今日のテーマのモータースポーツについても、電気モーターはガソリンエンジンと違って回転数ゼロから最大トルクを引き出せるので、ルールさえ決めてしまえば、チームによって早い・遅いの差はほとんどなくなり、自動車レースは格段につまらなくなる、と指摘するむきもある。

 

 という一方で、来年(2014年)からはEVのフォーミュラレース「フォーミュラE」が開催されるとのこと。初年度はロンドン、ローマなどで開催され、8戦から10戦を予定している。

 

 自動車のエンジンが変わる。

 

 それだけで世界の環境も紛争地図も産業構造も、そしてスポーツもが変わる。

 

 まさに自動車のエンジンとは20世紀という時代そのものを駆動してきた動力源だった。

ル・マン24時間レースが開かれるサルトサーキットの事故現場には今も事故のメモリアルプレートが掲げられている(撮影: Stevingtonian)

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