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防災歳時記7月2日金閣寺とアブレゲール

足利義満によって建立され金閣寺(撮影: cyesuta)

 今から63年前、1950年(昭和25年)の今日7月2日未明。足利義満によって建立された国宝・金閣寺の舎利殿は猛烈な炎に包まれ全焼した。

 

 犯人は見習い僧侶で大谷大学の学生 林承賢(当時21歳)と判明し、行方を捜索するが、左大文字山の山中で睡眠薬を服用し、切腹しているところを発見され一命をとりとめた。

 

 犯行の動機は、自分が病弱で重度の吃音があることの一方で、金閣寺が拝観料で運営され僧侶より事務方が権力を持っていることがあり、などなど…。

 

 厭世的な感情があることはなんとか分かったが、それがどうして金閣寺に放火することにつながるのかは、さっぱり分からない。

 

 ということで、同時代の作家たちが、その心理を解き明かそうと、この事件を文学作品に仕立てたのが、例えばあの三島由紀夫の「金閣寺」など。

 

「金閣寺を焼かねばならぬ…」

 

 小説「金閣寺」では、主人公にとっての金閣寺は「美の象徴」であり、彼の人生の随所に立ちはだかり、邪魔をする存在のようである。

 犯人の心理が本当にそうだったか否かはおいておいて、この時代はこうした「大それた」犯罪がいくつも発生し、それを「アプレゲール(戦後派)」という言葉で描写していた。

 

 つまりは戦争によって戦前の価値観や権威がことごとく崩壊し、「モラルハザード」を起こした若者たちが無軌道な行動に出ることをして、そう呼んだらしい。

 

 例えば東大生が高利貸しの会社を作った「光クラブ事件」。

 

 周囲の目を引く画期的な広告を打ち、多額の資金を調達したが、社長の山崎晃嗣が物価統制令違反で逮捕されると同時に、信用を失い業績が急激に悪化。

 

 約3000万円の債務不履行に陥った山崎は会社で青酸カリをあおり、自殺した。

 

 この事件もまた文学者たちの興味を引いた。

 

 この事件を題材に、三島由紀夫の「青の時代」が生まれ、そして推理小説の巨匠 高木彬光の名作「白昼の死角」となって、映画化もされた。

 

 他には、「日大ギャング事件」と呼ばれる日大の19歳の職員(運転手)が職員の給料191万円を強奪した事件もアプレゲールと呼ばれた。

 

 ただの強盗事件なのに、なぜそう呼ばれたか?

 

 犯行後、19歳の少年は恋人の日大教授の娘(当時18歳)と逃走するが、逮捕された時に、恋人に向かって「オー!ミステーク」と軽薄に叫んだから 。

 

 金閣寺放火事件と光クラブ事件と日大ギャング事件を「アプレゲール」という時代精神で類型化するのは無理があるような気もするが、「モラルハザード」と言う意味では、今もそんな事件が後を絶たない。

 

「地球温暖化や東電の原発事故でCO2排出権取引が注目されていると投資を持ちかけた詐欺」

 

「お年寄りに、ご注文いただいたカニを着払いでお届けします、と電話する通称カニカニ詐欺」

 

「アベノミクスで株や商品が値上がりすると持ちかけた投資詐欺」

 

「福島第一原発事故で乳児の甲状腺がんリスクが高まっているからそれを予防するためにワクチンを開発するとしてワクチン債なるものを売りつけたワクチン債詐欺」

 

 こういう手合いは、別に戦後だけでなくどんな時代にもいそうだが、いつも思うのは、そんなことを考えるだけの頭脳があるのなら、もう少し建設的なことにその能力を使えなかったのかと言うこと。

 

 少なくとも自分よりは十分「まともな商才」があった気がしてならない。

光クラブの広告(出典: 毎日新聞社「昭和史第13巻 廃墟と欠乏」より)

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