防災と災害情報のニュースメディア
  • 生物

王蟲そっくり!超低温や宇宙でも生きる 地上最強クマムシをゲノム解析

クマムシは、極端に乾燥した環境でも水分量 1〜2%程度まで耐えられる。この乾眠状態になると、氷点下273℃〜100℃の温度、真空から 75000 気圧、数千グレイの放射線など、さまざまな極限環境に耐性がある(慶應大)

 極端な乾燥や低温環境にさらされて脱水し、仮死状態になっても、水分を補給すると復活する世界最強生物のクマムシについて、慶應義塾大学や英エジンバラ大学などの共同チームは、遺伝子情報の解読を行った結果、細胞を乾燥から守るための特有の遺伝子の存在を突き止めた。

 

 体長1ミリ以下のクマムシは、南極のような超低温環境で30年以上にわたって冷凍保存されていても蘇生したり、放射線が行き交う真空の宇宙空間にも耐えられる世界最強の生物として知られるが、その生態や進化の歴史には解明されていない謎が多い。

 

 山形県にある慶応大・先端生命化学研究所の大学院生、吉田祐貴さんと荒川和晴准教授のグループは、エジンバラ大などと共同で、「ドゥジャルダンヤマクマムシ」と「ヨコヅナクマムシ」の2種のゲノム情報を解読。前者はクマムシの中では比較的、環境耐性が弱いが、一方で後者は横綱の名前にふさわしい最強生物だ。 

 

 2種類の遺伝情報を比較した結果、どちらにも共通して細胞を乾燥から守るためのクマムシ特有の遺伝子が多数あることが判明したほか、老化を防ぐ抗酸化作用に関係する遺伝子を発見。これらの遺伝子を必要に応じて「オン」することで、乾燥に対する耐性をコントロールしていることを確認した。

 

 クマムシは生物学的には、4対8脚の脚でゆっくり歩く「緩歩動物」に分類されており、昆虫などの節足動物か、線虫などの線形動物のいずれかに近いと考えられてきたが、解析の結果、線形動物に近い可能性が浮上した。

 

 また2015年には、米ノースカロライナ大学の研究グループが、バクテリアなど他の生物のDNAを取り込むことでクマムシに環境耐性がついた可能性があると指摘しているが、慶應大のチームはこれを否定し、実験過程で誤って他の試料が混じってしまった汚染が原因だと明らかにした。

 

 クマムシからはこれまでにも細胞を保護する働きの遺伝子が多数発見されており、今回の研究成果によって、医療やバイオテクノロジーの分野への応用に期待が寄せられている。先端生命化学研究所の冨田勝所長は「極端な脱水状態でも耐えられる生命現象のメカニズムの一端を明らかにすることは、“生命とは何か”という究極の問いに迫るロマンのある研究だ」とコメントしている。

 

 なおこの研究成果は、米科学誌『PLOS Biology』に掲載された。

クマムシ

左は乾燥していない環境でのクマムシ。乾燥状態が極限に達すると、右のように手足を縮めて樽のような形になる(提供:慶應大)

クマムシ

比較的身近なクマムシ。今回ゲノム解析したのは、札幌で採取したヨコヅナクマムシと、イギリスの沼にいるドゥジャルダンヤマクマムシ(提供:慶應大)

 あなたにオススメの記事

メニュー