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防災歳時記11月18日 ユートピアの落とし穴

人民寺院の教祖ジム・ジョーンズ(Jonestown Institute所蔵)

 今から35年前、1978年の今日11月18日に全米を震撼させる、いや全世界を震撼させる衝撃的な事件が起きた。

 

 人民寺院の集団自殺

 

 人民寺院は共産主義を信奉する自称「救世主」の米国人ジム・ジョーンズが設立したキリスト教系のカルト宗教。

 

 南米ガイアナに集団移住し、ジャングルを切り拓いて理想郷「ジョーンズタウン」を作った。

 

 しかし、教祖らによる信者への暴行事件や強制労働の噂が立ち、社会問題になる。

 

 こうした動きを受けて、1978年11月14日にレオ・ライアン下院議員と信者の家族、報道陣らで構成される「視察団」がジョーンズタウンを訪れた。

 

 一見、平和そうに見える町、しかし監視の目がないところでは、多くの信者が帰国を希望した。

 

 最終的にライアン議員率いる視察団は16人の帰国希望者を米国に帰還させることを提案し、ジョーンズタウン近くの空港から、小型機で米国に向けて飛び立とうとする。

 

 しかし、その時に惨劇の火ぶたは切って落とされた。

 突然、帰国希望者の1人が発砲、さらに密林から他の信者たちがトレーラーで現れ、ライアン議員やNBCテレビの取材クルーらを次々に射殺した。

 

 この襲撃後、ジョーンズタウンでは、教祖ジム・ジョーンズが「ライアンら嘘つきどもによって、ここでの生活が不可能になった。別世界への旅立ちだ」などと演説し、信者たちはシアン化合物入りの水を飲んだり、注射したりして、集団自殺を図った。

 

 この集団自殺の様子を録音したテープは世にも恐ろしい。

 

 最初は信者たちの歌声が鳴り響いているが、次第に歌声は途絶え、最後は静寂に包まれた。

 

 自殺を拒絶した信者は、集団に押さえつけられて、シアン化合物を注射されるか、射殺された。

 

 結果1000人余りの信者のうち、914人が死亡、18歳以下の子どもが267人いた。

 

 これが「ユートピア」の現実だ。

 

 そもそも16世紀にトマス・モアが、その著作の中で描いたユートピア(ギリシャ語で「どこにもない場所」という意味の造語)とは、原始共産制のような極度の管理者会。

 

 決して本当の「理想の社会」ではない。

 

 そもそも人間に多様な価値観が許容されるならば、人によって、その思い描く「理想」もまたさまざまなはず。

 

 トマス・モアがいみじくも「どこにもない場所」と描写した通り、「理想の社会」が単一の形として現実世界に結実することは論理的に矛盾している。

 

 人民寺院しかり、北朝鮮しかり、オウム真理教しかり。

 

 誰かの理想は、他人にとっては必ずしも「理想」とは限らない。

 

 だから「理想の国家」、「理想の会社」、「理想の町」、「理想の家族」なんて軽々しく口にする奴がいたら気をつけた方がよい。

 

 そんな人物は、「大嘘つき」か「独善的な独裁者」、もしくはただの「誇大妄想癖」かもしれないから。

射殺されたレオ・ライアン米下院議員

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