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防災歳時記12月14日 些細な噂がパニックへ 豊川信用金庫事件

 今から40年前、1973年の今日12月14日、愛知県豊川市で「豊川信用金庫事件」が起きた。

 

 字面だけ眺めると、ライフル銃を持った銀行強盗犯が立て籠もり事件でも起こしたよな錯覚に陥るが、事実はさにあらず。

 

「豊川信用金庫が潰れる」という根も葉もない噂が14日に大きく広まり、預金者達による取り付け騒ぎが起きたのだ。

 

 事態を重く見たマスコミ各社が火消しに走り、さらに大蔵省と日本銀行が経営保障をすることで最終的にこのパニックは沈静化に向かったが、そもそもなぜこんな事態が起きたのか?

 

 キッカケは女子高生の他愛もない会話だった。

 

 1973年12月8日、豊川信用金庫に就職の決まっていた愛知県内の女子高生Aさんが、友人に「信用金庫は危ないわよ」とからかわれた。

 

 これは単に「銀行強盗が入るかもよ」という幼稚な冗談だったのだが、女子高生Aさんは「豊川信用金庫の経営が危ない」と勘違いしてしまい、親戚に相談してしまう。これが火種となった。

 

 相談された親戚が知人に「豊川信用金庫は危ないらしい」と漏らしたところ、まるで伝言ゲームのように地元住民たちに広がり、実際にお金をおろす者が出始めたのである。

 

 しかも間の悪いことに、そのことを聞いたアマチュア無線愛好家が無線を用いて噂を広めたために、デマがさらに急拡散し、13日には約5000万もの預金が引き下ろされる事態となった。

 

 当初は「危ないらしい」だった噂も、いつしか「危ない」から「潰れる」、さらに「もうシャッターは上がるまい」と生々しい伝言になって世間へ広がり、14日、事態の収束を図るために同信金から出された声明が、奇しくもトドメとなってしまった。

 

 この日、同信金が「破綻しない」という声明を出したところ、なぜかそれが「職員の使い込みが原因」で、さらに「理事長も自殺」という風に曲解されたのが決定打となり、総額で約26億円もの預金が引き下ろされたのだ。

 

 ヘタをすれば本当に経営破綻へと追い込まれかねない危険性を孕んでいた。

 

現在の豊川信用金庫本店(2006年撮影)/wikipediaより引用

 結果的に、国が経営保障をすることで事なきを得たのは先にも述べたが、単なる女子高生の冗談がここまでコトを大きくするとは、噂とは本当に恐ろしいものである。

 

 1973年という年は、10月に「オイルショックでトイレットペーパーがなくなる」というデマも日本中を駆け巡り、実際「トイレットペーパー騒動」も起きているのだから、パニックに陥った人心がいかに脆いものか痛感させられよう。

 

 Facebookやツイッター、LINEなど。現代は、40年前のアマチュア無線とは比べ物にならないほど、デマや噂が急拡散する素地はできている。

 

 しかし、同時にインターネットは、正しい情報を素早く伝えるスペックも兼ね備えている。

 

 使い道を誤れば危険だが、極めて便利でもあるツールを有効活用するにはどうすべきか。一人一人に冷静な判断が求められるのは、もはや説明するまでもないだろう。

 

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