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防災歳時記1月31日 バナナが!危機から生還した宇宙の英雄

ハムが搭乗したマーキュリー計画のレッドストーンロケット(出典: NASA/MSFC)

 今日は、現在の宇宙開発技術の発展に多大な貢献をした、一人の宇宙飛行士の話をしよう。

 

 その先達は、人類初の宇宙飛行を成し遂げたソ連のガガーリンより先立つこと3ヶ月前に、宇宙飛行を経験した。

 

 その英雄の名前は『ハム(Ham)』。

 

 カメルーン生まれのチンパンジーだ。

 

 ハムは、40匹の候補者からテストで選抜されたエリート。

 

 まず18匹が一次選抜され、さらにその中から勝ち残った6匹のうちの一人(一匹?)。

 

 ソ連との熾烈な宇宙開発競争を繰り広げている米国にとって、有人宇宙飛行を成し遂げるマーキュリー計画は最重要の国家課題。

 

 当時2歳のハムと同僚のエノスは、打ち上げの1年以上前から宇宙飛行に向けての訓練に入った。

 

 ハムには2つの重要なミッションがあった。

 

 1つは、宇宙船の中で人間(動物)が生存できることの確認。

 

 そしてもう一つは、宇宙船の中で人間(動物)が計器を操作する(つまりは宇宙船を操縦できる)かどうかを確認すること。

 

 このためにハムは、青いランプが点滅したら5秒以内にレバーを押す訓練を重ねた。

 

 間違うと軽い電気ショックが、成功するとバナナが出てくる。

 

 そして彼は、完璧にこの訓練をこなした。

 今から53年前、1961年の今日1月31日(米国時間では1月30日だが)、ついにその日がやってきた。

 

 ハムを載せたレッドストーンロケットは、フロリダ州ケープ・カナベラル空軍基地から打ち上げられた。

 

 しかし想定外の緊急事態が発生する。

 

 ハムを載せたロケットは、燃料を使い切り、脱出用タワーロケットが予定より早く点火、宇宙船の軌道は大きく狂った。

 

 そしてさらに決定的なトラブルが発生する。

 

 電気系統が故障し、最も重要なミッションを担う「ライトの点滅でバナナを支給するシステム」がうまく作動しなくなったのだ。

 

 ハムは指示通りの正しい手順で同システムを操作しているにも関わらず、バナナは出てこず、手がビリビリするばかりだった。

 

 ハムの宇宙船は16分39秒の宇宙飛行後、なんとか無事着水し、米海軍の救助船に救出された。

 

 当然ながら救出された時、ハムはすごく怒っていた。

 

 着水の衝撃も想定以上に大きく、カプセル内に海水が浸水したことも、ハムの怒りを増大させ、所かまわず噛み付くありさまだった。

 

 だが、そこは多くの候補者から選抜された宇宙飛行士。さすがエリートだ。

 

 すぐに正気を取り戻し、ごらんのように救助船の副長と握手の図をパチリ。

 

 よく見ると、鼻の頭にあざを作っている。

 

 それは宇宙空間がどれだけ過酷な環境かを雄弁に物語っていた。

 

 ハムはその後、ワシントンD.Cやノースカロライナの動物園で悠々自適の引退生活を送り、天寿を全うした後は、ニューメキシコ宇宙歴史博物館前に埋葬されている。

無事生還し、救助船の副長と握手するハム(出典: NASA)

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