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防災歳時記2月21日 人生の経験が子孫に遺伝するとしたら…

DNAの二重螺旋構造を発見したフランシス・クリックを記念したケンブリッジ大学キーズ校のステンドグラス(撮影: Schutz)

 今から61年前、1953年の今日2月21日、英国のフランシス・クリックらによってDNAが「二重螺旋構造」であることが解明された。

 

 それまでも、DNAが遺伝子を司っているのではないか?と薄々分かってはいたが、「生命の設計図」の仕組みが明らかになった瞬間だった。

 

 グアニン(G)、シトシン(C)、アデニン(A)、チミン(T)の4つの塩基配列の組合せが「遺伝情報」の暗号だったと分かった世紀の発見は、2ヶ月後の4月25日の科学誌「ネイチャー」に、わずか2ページの論文として掲載された。

 

 その後DNAの研究は進み、この発見から50年後の2003年には、30億塩基対のヒトゲノム(染色体)のすべてが解析された。

 

 だが世紀の発見によって味気ない現実を知ることもある。

 

 「例えば細胞に刻み込まれた記憶」、つまり遥か太古のご先祖様の記憶が受け継がれることなんてないことが分かった。

 

 なぜなら「経験=心の問題」によって、塩基配列が変わるなんてことはあり得ないからだ。

 しかしここにきて、さらに新しい研究領域が出現している。

 

エピジェネティクス

 

 どうも遺伝情報は、DNAの「塩基配列」だけで決まるわけではなく、他にも遺伝情報に関与するメカニズムがあるんじゃないか?

 

 このエピジェネティクスが注目しているのは、「DNAのメチル化」。

 

 あえて誤解を恐れずに分かりやすく説明すると、例えばDNAを1冊の楽譜に例えるなら、塩基配列は音符の並びなのに対し、「DNAのメチル化」は、フォルテとかピアノといった、どの音符に強弱をつけるかを決める音楽記号のようなものか…。

 

 昨年12月に米国の研究チームが驚くべき実験結果を科学誌「ネイチャー」に発表した。

 

 オスのマウスの足に電気ショックを与えながら、特定の臭いをかがせ、この臭いを恐れるように訓練する。

 

 このオスの子どもと孫に、同じ臭いをかがせると、ひどくおびえた様子を見せた。人工授精により「父親の教育」という要素を排除してもだ。

 

 このオスの精子を調べると、嗅覚をコントロールする遺伝子情報に、「メチル化」が起きていた。

電気ショックを与えながら特定の臭いをかがせたオスの子孫は、同じ臭いにひどくおびえた様子を見せた(この写真は本文と関係ありません 撮影: haven't the slightest)

 つまり、少なくとも「トラウマ体験」は、後世に遺伝していたことになる。

 

 ようやく自分の「高所恐怖症」の理由が分かった気がした。

 

 生まれつきの「高所恐怖症」、「水が怖い」、「食べ物の好き嫌い」…、こうした合理的な説明がつかないものは、やっぱり「ご先祖様の恐怖体験」にあったんじゃないか?

 

 太古の人々の記憶や経験が、自分の細胞の中に息づいていると思うと少しわくわくしてきた。

 

 と、同時に、自分の人生が遥か未来の子孫たちにまでも影響を与えるのだとすれば、「自分一人の人生じゃない」の意味が、今までより遥かに重く感じられる。

 

 さして長くない残りの人生、少しでも充実した時間を送りたい、とちょっとだけ本気で思った。

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