2週間経っても行方の知れないマレーシア航空370便。
乗客乗員239人を乗せたまま、いったいどこに消えたのか。その消息を巡ってはさまざまな説が展開されているが、機長も疑いの目を向けられている一人だ。
まさか機長が……と思うかもしれないが、実際、過去には機長が原因となった事故が起きている。
今からちょうど10年前の今日3月22日、シベリアの針葉樹林にロシアのアエロフロート航空593便が墜落した。
モスクワの国際空港を飛び立ち、香港に向けて順調に飛行していた593便。遭難信号や緊急事態を知らせる通信もなかったのに、何が起こったというのか……。
が、コックピットのボイスレコーダーを回収して調べたところ、記録されていたのは機長の驚くべき行動だった。
操縦室に響く、不釣り合いな甲高い嬌声。なんとヤドスラーフ・クドリンスキー機長は自分の娘ヤーナと息子エルダーを機長席に座らせて、操縦桿を握らせていたのだ。
クドリンスキー機長は、子供が好き勝手に動かしても自動操縦装置によって補正されると安心していたのだろう。しかし、自動操縦装置には一部の機能を解除する「隠しコマンド」があり、不運にもエルダーはたまたま、これを入力してしまう。
機体は右に傾くが、「隠しコマンド」の存在を知らなかった機長やパイロットに原因はわからない。混乱している間にも傾きは徐々に大きくなり、やがて高度を保てなくなって機体は降下を始めた。
解除されずに残った自動操縦の機能が高度を保とうと機首を急激に上げたため、加速によるすさまじいGがかかって乗員は身動きが取れない……。
操縦席に座っているのは、依然としてエルダーだ。失速し、ようやく席を代わった頃には時遅し。機体はスピン状態に陥りながらまっ逆さまに急降下し、山岳地に激突してしまった。
この事故で、乗員12人、乗客63人あわせて75人全員が死亡。
「子供たちに思い出を作ってやろう」。機長はそんな親心から操縦室に子供たちを招き入れたのかもしれない。だが、その軽はずみな行動の対価はあまりに大きかった。